5/22 宝塚花組 「あかねさす」博多座

お正月の「ポーの一族」にあてられて勢いでチケットを買って見に行ってきた。

勢いだけで関西からはるばる博多に行くなんて、私もだいぶ疲れているなあと。

(仕事に嫌気がさすとすぐにチケットをぽちっとしがち)

初めての博多座に少し緊張しつつ、出発。

 

「あかねさす」を観るのは初めて。

「あかねさす」の歌は高校の時授業でやった記憶があり、「元彼が手を振ってくるけど、どーしよー」ってなる歌、古代の人は結婚とか恋愛とかかなり奔放なんだなと高校生だった私は思っていたなと当時のことを思い出しながら、いざ観劇。

 

幕が上がりはじめに歌われる「あかねさす」の歌を歌う仙名さんの声に心の底からうっとり。本当に人の声ですか?というような幻想的な音色だった。一瞬で物語世界に引き込まれた。

終演直後、物語は中大兄の身勝手さが引き起こしたものだなという感想だったけど、日を経てみると額田の無邪気な奔放さがすべての元凶なのではなかろうかという気がしている。

台詞は暗喩に満ちていて、とても美しく、想像力をかき立てるし、舞台装置(特に中大兄、額田、大海人のダンスの盆とセリ)の使い方も飽きがこなくて、博多まで見に行った甲斐があった。

 

人物それぞれについて

 

額田大王

宝塚の舞台でトップスターが主人公ではないものはあるはずないと思いながら、内心「これは額田の物語だ!!」と思う自分もいて。話が進むにつれて、これって主人公は額田なのでは?と少々パニックになった。

それにしても額田の「上昇志向ばんばんで小生意気なんだけど、才気に溢れていて、愛嬌もあって男にもてる」女にはすごく説得力あった。いるよなあ、こんな人って思わせられた。しかも、100%自覚しているかといいえば、そうは思えないけど、だからといって100%無自覚でもない。有馬の地で皇極天皇に言った「私にも罪がある」というところに嫌な意味ではなく、ものすごいしたたかさを感じた。強さと可愛らしさが共存していて魅力的なんだけど、近くにいたらヤバい人。

 

仙名さんの実力が十分に発揮される役で、シーラを演じたときも思ったけど「プロ感」が他の誰よりもあるよね・・・もちろんタカラジェンヌなんだけど女優というかなんというか・・・

 

明日海 中大兄

明日海さん演じる中大兄も柚香さん演じる大海人も額田に魅了された男にすぎない!って感じが強かった。

中大兄は帝王のような覇王色を持っているけど、全面的に強さで押し切れる人じゃないから、疲れた時には額田には甘えたい人。自分の弱さを包んでくれる強さを額田に求めた気がした。額田もまんざらではない感じに見えたし。(自分の才能を評価してくれる+甘えてくるって自分のプライドをくすぐられると思う。)

 

明日海さんと仙名さんの関係を私がそんな感じで捉えているから、こんな関係に見えたのかも。明日海さんは台詞になるとほんの少し滑舌に不安を感じてしまうけど、歌うと本当に歌詞が明瞭で気持ちいい、望海さんや礼さんのようなうまさとは違うけど、聞きやすくて、安定していて好きだわ。お二人より自然なのかな?何がどう違うのか表現できない。

 

柚香 大海人

大海人は兄が好きで尊敬していて、額田の積極的な部分や剛胆さに惹かれてついていく人。妻の仕事にも協力的で妻が仕事で評価されるのを側で支える感じがした。押しは強くないけど、すべてにおいて優しい人。

兄に妻を奪われそうになっても、兄も妻も好きだから強く否定できないところが優柔不断というか、優しさ故というか、でもそういう人なんだね・・・(額田は大海人が思っていたより無自覚に上昇志向の強い人なんだよね)

 

鳳月 天比古

 

額田との幼少期のやりとりが少し年上のお兄さんとおしゃまな妹という感じがして、額田に心酔しているというよりは自分にはないまぶしさに憧れたくらいなことかな。その後、実際に会えないことで想像だけが膨らみ、どんどん憧れの像が現実と離れていった気がした。有馬の地で現実の額田を見た時には、ひどく失望したけど、時間とともにその傷は癒されて、穏やかに暮らせそう。

鳳月さんの芝居が大好きなのでもっと出番があればと思ったけど、天比古は役が小さかいかなと。鳳月さん主演の舞台を見たい。

 

桜咲 鏡王女

額田とは対照的に控えめでたおやかさのある人。中大兄に見初められて宮中に上がるのも納得の人。中大兄のプロポーズが「鏡王女命!」だったことが後の展開の中大兄の身勝手さと鏡王女の不幸さを際立たせてた。

鎌足に嫁ぐことを提案する場面の笑いには悲しさや諦め、開き直りに満ちていて、本当に翻弄され疲れたんだと伝わってきた。瀬戸さん演じる鎌足は仕事の部分は中大兄に忠誠を誓い、その考えがぶれることなく、非道と思われようがかまわず進みそうだったけど、訳あって嫁に来た鏡王女には丁寧に敬意を持って接してくれそう。鏡王女も臣下に嫁いだ方が気苦労も少なそうだし、長い目で見れば夫婦として幸せになれそう。

 

男役も娘役も人材が豊富で、花組の充実っぷりをひしひしと感じた舞台だった。特に娘役はそれぞれ色合いの違う役者がそろっていて、それぞれ魅力的、次回の大劇場公演も楽しみだなと。できるだけ多くの役者さんの素敵な活躍ぶりが見られるものでありますように(ほとんど祈りに近い・・・)